賃貸でもできるスマートホーム|穴を開けない始め方と最初の1台

結論:賃貸でも、壁に穴を開けずにスマートホームは始められます。方法は大きく3つ、「貼る(両面テープなどで付ける)」「挿す(コンセントや電球のソケットに付ける)」「赤外線(今あるリモコンの信号をスマホから送る)」です。配線をさわる工事や、壁に穴を開ける取り付けは、この3つには入りません。

「エアコンを消し忘れたかも」「帰る前に部屋を涼しくしておきたい」。そう思っても、賃貸だと「壁に穴を開けていいの?」「退去のときにお金を取られない?」が気になって、なかなか手が出ませんよね。

この記事では、賃貸で戻せる形の始め方を、順番にまとめました。

この記事で分かること

  1. 賃貸でできる3つの方法(貼る・挿す・赤外線)と、できないこと
  2. 退去のときに困らないための、原状回復の考え方と管理会社への聞き方
  3. 最初の1台の選び方と、つないだあとに必ずする設定

『ひより、うちをつなぐ』「壁に穴、開けていいの?」

漫画『ひより、うちをつなぐ』「壁に穴、開けていいの?」
※この漫画はフィクションです。登場する人物・団体は架空のものです。
漫画の内容を文字で読む
  1. 1コマ目:夏の夕方、会社帰りの電車でスマホを見るひより(心の声)「エアコン、消してきたっけ…」
  2. 2コマ目:アパートの廊下で、ひよりが大家の真壁さんに声をかける。ひより「スマートホームって、壁に穴を開けるんですか?」
  3. 3コマ目:真壁さんがタブレットに3つの絵(テープ・コンセント・リモコン)を見せる。真壁さん「賃貸は戻せる形で。貼る・挿す・赤外線の3つです」
  4. 4コマ目:ひよりが目を輝かせる。ひより「それ、賃貸でもできます?…できるんだ!」

賃貸でできる3つの方法|貼る・挿す・赤外線

結論:まずは「赤外線」か「挿す」から。どちらも、付けた物を外せば元どおりです。

賃貸でできる3つの方法:貼る・挿す・赤外線
赤外線挿す貼る
どんな方法?今あるリモコンの信号を、スマホから送るコンセントや電球のソケットに付ける両面テープなどで、スイッチの横やドアに付ける
代表的な機器スマートリモコンスマートプラグ、スマート電球スイッチを押すボット型の機器、開け閉めのセンサー
できること(例)エアコン・テレビ・照明をスマホや声で操作。タイマーつないだ家電の電源の入り切り、電球の明るさ壁のスイッチを押す、ドアが開いたら知らせる
戻し方置いてあるだけなので、どかすだけ抜くだけ、電球を元に戻すだけテープをはがす(はがし方に注意)
退去のときの心配ほぼないほぼないテープの跡が残ることがある

赤外線

どんな方法?
今あるリモコンの信号を、スマホから送る
代表的な機器
スマートリモコン
できること(例)
エアコン・テレビ・照明をスマホや声で操作。タイマー
戻し方
置いてあるだけなので、どかすだけ
退去のときの心配
ほぼない

挿す

どんな方法?
コンセントや電球のソケットに付ける
代表的な機器
スマートプラグ、スマート電球
できること(例)
つないだ家電の電源の入り切り、電球の明るさ
戻し方
抜くだけ、電球を元に戻すだけ
退去のときの心配
ほぼない

貼る

どんな方法?
両面テープなどで、スイッチの横やドアに付ける
代表的な機器
スイッチを押すボット型の機器、開け閉めのセンサー
できること(例)
壁のスイッチを押す、ドアが開いたら知らせる
戻し方
テープをはがす(はがし方に注意)
退去のときの心配
テープの跡が残ることがある

1.赤外線:今あるリモコンを、スマホから使う

エアコンや照明を、もともと付いているリモコンで操作しているなら、いちばん手軽なのがスマートリモコンです。部屋に置いておくと、リモコンと同じ赤外線の信号を出してくれるので、スマホのアプリや声で家電を操作できます。

  • 工事: 要りません。棚の上などに置いて、電源(USBなど)につなぐだけです。
  • 向いている人: 「エアコンの消し忘れ」「帰る前に冷房を入れたい」が、いちばんの悩みの人。
  • 注意: 赤外線は、家電の受光部(信号を受け取るところ)に届く場所に置く必要があります。家具の陰になる場所では動かないことがあります。対応する家電の種類は、機器ごとに違うので、買う前に公式ページで確かめてください。

2.挿す:コンセントや電球のソケットに付ける

スマートプラグは、コンセントと家電の間に挿す機器です。つないだ家電の電源を、スマホから入れたり切ったりできます。スマート電球は、今の電球と取り替えて使う電球で、明るさや色をスマホで変えられるものがあります。

  • 工事: 要りません。コンセントに挿す、電球を取り替える、という、ふだんしていることと同じ作業です。
  • 注意: つなぐ家電の消費電力が、スマートプラグの上限を超えないかを確かめます。暖房器具は、スマートプラグにつながないでください。SwitchBotは、電気ストーブや電熱器など、人がいない間に動くと火事などのおそれがある機器はつながないよう、注意書きで求めています。また、スマートプラグはコンセントに直接挿し、延長コードや電源タップには挿さないようにと案内しています(出典:SwitchBotサポート「SwitchBotプラグミニの安全上と使用上のご注意」https://support.switch-bot.com/hc/ja/articles/7615665255959 、「SwitchBotプラグについて安全上と使用上のご注意」https://support.switch-bot.com/hc/ja/articles/360041954473 、2026年10月16日確認)。電球は、口金(ねじ込む部分)の大きさと、器具が対応しているかを見ます。

3.貼る:スイッチを押す・ドアの開け閉めを知る

壁のスイッチの横に貼って、スイッチを物理的に押してくれるボット型の機器や、ドアや窓に貼って開け閉めを知らせるセンサーなどがあります。電池で動くものが多く、配線にはさわりません。

  • 工事: 要りません。両面テープで貼るのが一般的です。
  • 注意: はがすときに、壁紙やドアの塗装がいっしょにはがれることがあります。次の章の「はがし方」を先に読んでから貼ってください。

できないこと:配線をさわる工事は、電気工事士さんに

壁の中の配線につながっているスイッチやコンセントを、スマート対応の物に取り替える工事や、コンセントを増やす工事は、電気工事士の資格が必要です(電気工事士法第3条)。資格のない人がしてはいけない作業として法律で決まっていて、罰則もあります(同法第14条)。

賃貸では、そもそも部屋の設備を勝手に替えることになるので、資格の前に、管理会社や大家さんの許可が必要です。やりたいときは、まず管理会社に相談し、工事は電気工事士さんにお願いしましょう。

どこからが資格の要る工事なのかは、照明スイッチの交換に資格は要る?で、法律の条文をもとに図で整理しています。

『ひより、うちをつなぐ』「その両面テープ、はがせる?」

漫画『ひより、うちをつなぐ』「その両面テープ、はがせる?」
※この漫画はフィクションです。登場する人物・団体は架空のものです。
漫画の内容を文字で読む
  1. 1コマ目:ひよりの部屋。壁のスイッチの横に、スイッチを押す小さな四角い機器を貼ろうとするひより。ひより「ここにペタッと…」
  2. 2コマ目:ドアを開けて様子を見に来た真壁さんが、手のひらを向けてやさしく止める。真壁さん「貼る前に、はがすときのことを考えましょう」
  3. 3コマ目:真壁さんがタブレットで「目立たない所で試す」「取扱説明書のはがし方で、ゆっくり」の2つのメモを見せる。真壁さん「まず目立たない所で試す。取扱説明書のはがし方で、ゆっくり」
  4. 4コマ目:ひよりがスマホで管理会社にメールを打っている。ひより「念のため、管理会社にも聞いておこう」

退去で困らないために|原状回復の考え方

結論:画鋲くらいの小さな穴は、ふつうの使い方の範囲とされています。ネジやくぎの穴、自分で付けた物の跡は、借りた人の負担になることがあります。両面テープの跡ははっきり決まっていないので、跡を残さないのがいちばんです。

賃貸の退去のときに、どこまで借りた人が直すのか(原状回復)については、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」で一般的な考え方を示しています。

原状回復の負担の分け方
例ガイドラインの考え方
壁の画鋲・ピンなどの穴(下地のボードを張り替えなくてよい程度)通常の使い方の範囲。貸す人の負担とされる
重い物を掛けるためのくぎ穴・ネジ穴(下地のボードの張り替えが要る程度)借りる人の負担とされる
借りた人が天井に直接付けた照明器具の跡借りる人の負担とされる
両面テープの跡ガイドラインの表には、はっきり書かれていない

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html 、2026年10月16日確認)

気をつけたいのは、このガイドラインはあくまで一般的な目安だということです。実際には、賃貸借契約書の特約(その物件だけの決まり)が先に問題になることがあります。特約がどこまで有効かには条件があります。ガイドラインは、借りる人に通常より重い負担を求める特約が有効になる条件として、①特約が必要で、暴利的でないなどの合理的な理由があること、②借りる人が、通常の原状回復を超える負担を負うと分かっていること、③借りる人がその負担に同意していること、の3つを挙げています。まずは自分の契約書に「両面テープ禁止」「設備の変更禁止」などが書かれていないかを見ておきましょう。

両面テープで貼るときの、はがし方の考え方

両面テープを貼る前とはがすときの3ステップ

両面テープの跡が借りる人の負担になるかどうかは、跡の残り方しだいだと考えられます【推測:ガイドラインに明記なし】。跡を残さないために、次の順で進めると安心です。

  1. 貼る前に、目立たない場所で試す。クローゼットの中など、見えにくい場所に小さく貼って、数日後にはがしてみます。
  2. 壁紙に直接貼らない工夫をする。機器によっては、スイッチのプレートや、もともと付いているフックなどに付けられるものもあります。取扱説明書の付け方を確かめてください。
  3. はがすときは、ゆっくり。取扱説明書にはがし方が書いてあれば、それに従います。

管理会社に聞いておきたいこと

「これくらいなら大丈夫かな」と迷うものは、貼る前にひとこと聞いておくと、退去のときの話し合いがずっと楽になります。メールで聞いておくと、返事が記録に残ります。

管理会社への問い合わせ(文例)

件名:室内に機器を設置してよいかのご相談(○○号室) ○○管理会社 ご担当者さま ○○マンション○○号室の[名前]です。 室内で、次のような機器を使いたいと考えています。 ・壁のスイッチの横に、両面テープで小さな機器を貼る(配線にはさわりません) ・玄関ドアの内側に、開け閉めを知らせるセンサーを両面テープで貼る 壁紙や設備に手を加える工事はしません。 退去のときは、はがして元に戻します。 このような使い方をしてもよいか、また、気をつけることがあれば教えてください。 よろしくお願いいたします。

最初の1台の選び方

結論:「いちばん困っていること」が1つ解決する機器を、1台だけ買います。迷ったら、エアコンの消し忘れならスマートリモコン、決まった家電の電源ならスマートプラグです。

困りごとから選ぶ最初の1台
いちばん困っていること最初の1台の候補先に確かめること
エアコン・テレビ・照明を、外から・寝たまま操作したいスマートリモコン家電がリモコン(赤外線)で動くか。置き場所から信号が届くか
決まった家電の電源を、時間で入れたい・切りたいスマートプラグ家電の消費電力。電源を入れたら動き出す家電か
部屋の照明を、明るさや色まで変えたいスマート電球口金の大きさ。調光機能つきの器具・断熱材施工器具では使えないものが多い。密閉型の器具もすすめられていない(取扱説明書で確認)
壁のスイッチしかない照明を操作したいスイッチを押すボット型の機器スイッチの形。貼る場所(はがし方)

出典:SwitchBotサポート「SwitchBotスマート電球:安全上のご注意」https://support.switch-bot.com/hc/ja/articles/4409340795543 (2026年10月16日確認)

買う前に見ておきたい4つのこと

  1. 家のWi-Fiにつなげるか。多くの機器は家のWi-Fiにつないで使います。対応する周波数などの条件は、機器の公式ページで確かめてください。
  2. アプリと「ハブ」が要るか。機器によっては、それだけで動くものと、ハブ(中継の機器)が必要なものがあります。
  3. 日本で使ってよい機器か(技適マーク)。無線を使う機器は、日本の技術基準に合っていることを示す「技適マーク」の確認が大切です。海外の通販サイトで買う物は特に気をつけてください。
  4. アカウントとパスワード。アプリのアカウントを作るときは、ほかのサービスと同じパスワードを使い回さないようにします。

1台目で、全部そろえなくていい

スマートホームの機器は、あとから足していけます。最初から部屋じゅうをそろえると、設定に疲れてしまったり、使わない物が出てきたりしがちです。1台使ってみて「これは便利」と思えたら、次の1台を考える、で十分です。

『ひより、うちをつなぐ』「最初の1台は、困りごとから」

漫画『ひより、うちをつなぐ』「最初の1台は、困りごとから」
※この漫画はフィクションです。登場する人物・団体は架空のものです。
漫画の内容を文字で読む
  1. 1コマ目:家電売り場の前で、たくさんの箱を前に迷うひより。ひより「全部ほしくなっちゃう…」
  2. 2コマ目:となりの真壁さんがメモ帳を開いてやさしく聞く。真壁さん「いちばん困っていることは、何ですか?」
  3. 3コマ目:ひよりが少し考えて答える。ひより「エアコンの消し忘れ、です」
  4. 4コマ目:ひよりが小さな箱を1つだけ持って笑顔。真壁さんが指を1本立てる。真壁さん「では1台だけ。つないだら、まず初期パスワードです」

つないだら、最初にする設定

結論:機器をつないだら、その日のうちに「パスワード」と「アップデート」を確かめます。

スマートホームの機器は、インターネットにつながる機器(IoT機器)です。便利な一方で、設定が弱いままだと、知らない人に操作されたり、サイバー攻撃に使われたりするおそれがあると、政府広報オンラインも注意をよびかけています。

つないだ日にする3つの設定
  1. パスワードを、推測されにくいものにする。アプリのアカウントや、ルーターの管理用のパスワードが、初期設定や簡単なもののままになっていないかを見ます。
  2. ソフトウェア(ファームウェア)を最新にする。自動で更新する設定があれば、オンにしておきます。
  3. 使わない機能は切る。外出先から操作しない機器なら、その機能を切っておくと安心です。

出典:政府広報オンライン「ウェブカメラやルータが乗っ取られる?IoT機器のセキュリティ対策は万全ですか?」(https://www.gov-online.go.jp/article/202005/entry-9538.html 、2026年10月16日確認)

特に大事なのが、家のネットの入口にあるルーターです。

ルーターのどのパスワードを、どう変えればよいかは、ルーターの初期パスワードのままは危ない|家庭のチェックで、公的な資料をもとに手順をまとめています。

よくある質問

Q1.賃貸で、大家さんや管理会社に言わずに使ってもいいですか?

置くだけ・挿すだけの機器(スマートリモコン、スマートプラグ、スマート電球)は、ふだんの家電と同じ使い方なので、ふつうは連絡しなくてよいと考えられます【推測】。両面テープで壁やドアに貼る物は、契約書の特約によっては問題になることもあるので、迷ったら先に聞いておくと安心です。

Q2.退去のとき、両面テープの跡が残ったらどうなりますか?

ガイドラインの表には、両面テープの跡ははっきり書かれていません。跡の残り方や契約の内容で変わると考えられます【推測】。貼る前に目立たない場所で試す、はがすときはゆっくり、が基本です。

Q3.スマートスイッチに取り替えれば、もっと便利では?

壁の中の配線につながっているスイッチを取り替えるのは、電気工事士の資格が要る工事です。賃貸では管理会社の許可も必要です。どうしてもやりたいときは、管理会社に相談したうえで、電気工事士さんにお願いしてください。

Q4.スマートリモコンだけで、何ができますか?

リモコン(赤外線)で動く家電を、スマホのアプリや声で操作したり、時間を決めて動かしたりできます。対応する家電や機能は機器によって違うので、買う前に公式ページで確かめてください。

Q5.Wi-Fiがない部屋でも使えますか?

多くの機器は、家のWi-Fiにつないで使います。Wi-Fiがない部屋で使えるかどうかは機器によるので、公式ページで確かめてください。

まとめ|賃貸は「戻せる形」で、1台から

  • 賃貸でできるのは、貼る・挿す・赤外線の3つ。どれも配線にはさわりません。
  • スイッチ・コンセントの取り替えや増設は、資格の要る工事。管理会社に相談し、電気工事士さんに。
  • 画鋲くらいの穴はふつうの使い方の範囲。ネジ穴や、自分で付けた物の跡は、借りる人の負担になることがあります。両面テープは、はがし方まで考えてから。
  • 最初の1台は、いちばん困っていることを1つ解決する物を。
  • つないだら、その日のうちにパスワードとアップデート。
まとめ:賃貸スマートホームの始め方

参考にした資料